TTS・TTB・仲値の違い——銀行で外貨を買うといくら損するか

日本の銀行が対顧客向けに掲示する外貨レートには、仲値そのものはありません。掲示されるのはTTS(外貨を買うレート)とTTB(外貨を売るレート)——仲値に所定のスプレッドを乗せた価格です。仲値が1ドル150円のとき、TTSは151円前後、TTBは149円前後になり、片道1円がそのまま銀行の為替手数料として効いてきます。

東京の読者から、1 万ドルの送金を銀行窓口で依頼したときの明細が届きました。TTS は 151 円 20 銭、仲値は 150 円 00 銭。差は片道 1 円 20 銭で、これだけで 12,000 円がレートの中に消えていました。

このページでは、3つのレートの定義を整理したうえで、1万ドルを例にとって片道1円の差が実際にいくらになるのかを示します。続いて、銀行窓口・外貨両替所・コンビニATM・カード決済の4つのチャネルごとに、よくある上乗せ幅を横並びで比較し、最後に「どの場面でどのチャネルを選ぶか」の判断基準を一枚にまとめます。

一、TTS・TTB・仲値の関係

3つの用語は、それぞれ指す主体が違います。

仲値を中心に、TTSが上に、TTBが下に並びます。TTSと仲値の差、仲値とTTBの差——どちらも銀行の取り分で、片道1円が典型的な水準です。

具体例(米ドル):仲値が150.00円のとき、TTSは151.00円前後、TTBは149.00円前後。あなたが1ドルを両替するのに必要な円は、仲値基準の150円ではなくTTSの151円。差の1円が、銀行側の為替手数料としてそのまま効いてきます。

「為替手数料が無料」と書かれた銀行のサービスを見かけることがありますが、それは文字どおりの意味ではないことがほとんどです。スプレッド(買値と売値の差)にマージンを含める代わりに「手数料」という名目で取らない、という建て付けにしているだけで、レートの不利さ(片道1円分)は同じか、むしろ明示手数料を取る場合より大きいこともあります。「無料」と「割安」は別の概念です。

二、1万ドルを例にすると——片道1円はいくらになるか

数字を出すために、ドル円の仲値が150.00円のシーンを想定します。1万ドルを海外送金や外貨預金のような「電信送金」ベースで両替するケースを見てみます。

項目 仲値ベース 銀行のTTS(外貨を買うレート)
適用レート 150.00 円 151.00 円
1万ドルの支払額 1,500,000 円 1,510,000 円
差額(手数料相当) — 10,000 円前後(約 0.67%)

表中レート・金額とも一例。実際のTTS・手数料は銀行・時間帯・金額帯で変わります。比較するときは、当ページの仲値と、自分の銀行が提示したTTSを並べて差額を出してください。

1万円という数字は、手数料としては比較的大きい水準です。「海外送金は手数料がかかる」と聞いていた金額感より、思ったより高いと感じたかもしれません。実際にはここに、別途かかる中継銀行の手数料や、送金サービス会社の固定費が加わることもあります。送金経路を選ぶときは、レートの不利さと手数料を合計して比べる必要があります。

同じ金額でも、3,000ドルや5,000ドルなら差は数千円に縮みます。ただし、これは「少額なら気にしなくていい」という意味ではありません。金額に対する比率は同じで、3,000ドルなら3,000円、5,000ドルなら5,000円が、片道1円のスプレッドだけで消えてしまいます。

三、4つのチャネルのスプレッドを横並びで比較

外貨を入手する経路は、大きく4つに分けられます。同じ「外貨を買う」でも、チャネルごとに上乗せ幅の構造が違います。

チャネル 上乗せ幅の典型値 性質のメモ
銀行窓口(外貨預金・電信送金) 片道 約1円(0.6〜1%) スプレッド方式。為替「手数料」を上乗せしない代わりに、レートにマージンを含める。比較の基準線。
外貨両替所(空港・街中のトラベレックス等) 3〜5% 窓口方式。繁忙期・空港店舗はさらに上乗せされることがある。少額を即時両替する代わり。
コンビニATM(セブン銀行等) 1回 120円前後の固定費 + 1.6〜2% 固定費+料率のハイブリッド。少額では固定費の比率が目立つ。1回の金額が大きいほど有利。
クレジットカード(VISA/Mastercard/JCB) 海外事務手数料 1.6〜2.2% 為替自体はカードブランドのレートに近い。料率はブランドと発行会社の組み合わせで決まる。

上乗せ幅は公表されている一般的なレンジをまとめたものです。実勢はカード発行会社の規約、ATM運営会社のポリシー、両替所の立地・時間帯で変わります。必ず自分が使うサービスの料率を確認してください。

この4つを見ると、「どのチャネルが常に一番安い」は一概には言えないことが分かります。理由はコストの構造が違うからで、銀行窓口は「料率だけ」、コンビニATMは「料率+固定費」、両替所は「料率が高い分だけ」。同じ1万円相当の外貨を得るのに、どのチャネルを選ぶかで数千円の差が出ます。

四、いつどのチャネルを使うか——場面別の判断表

チャネルは「どれが正解か」で選ぶのではなく、「場面と金額でどれが相対的にマシか」で選びます。判断材料を3つの軸に整理しました。

場面 向くチャネル 理由
まとまった外貨預金を組みたい/海外送金をしたい 銀行窓口(外貨預金・電信送金) スプレッド1円が固定で、金額が大きくても上乗せ率が変わらない。比較の基準。
出発直前に空港で両替したい 外貨両替所(ただし金額を抑える) 上乗せは3〜5%と高いが、代替がない場面では少額に抑えて被害を限定する。
滞在中に現地ATMで引き出したい セブン銀行ATM など、海外提携ATM 1回120円前後の固定費はかかるが、1回の金額をまとめれば料率1.6〜2%で済む。少額の頻回引出しは避ける。
現地でカード払いができる場面 クレジットカード(JCB 1.6%/VISA・Mastercard 2.2%前後) 料率のみで、固定費はなし。ただしDCC(現地通貨以外での決済)には絶対に応じないこと。

3つの原則にまとめると:

  1. 少額の頻回は避ける。コンビニATMの120円は、3,000円を引き出すときは4%、30,000円を引き出すときは0.4%。固定費は1回あたりの金額が大きいほど薄まります。
  2. 空港やホテルの両替所は「最後の手段」。街中銀行窓口とコンビニATMが両方使えるなら、そちらを選ぶ方が、3〜5%の上乗せを回避できます。
  3. カード払いの可否を最初に確認する。カードが使えるなら、料率1.6〜2.2%が一番低コスト。ATM手数料を何度も払うより、よほど効率的です。

最後にひとつ:どのチャネルを選んでも、提示されたレートを当ページの仲値と並べて差額を出すのは同じです。「銀行の説明」と「両替所の説明」と「ATMの説明」が別物に見えても、実際に計算するのは(TTS − 仲値) / 仲値という一つの式。判断軸を揃えれば、チャネルのセールスポイントを落ち着いて比較できます。

よくある質問

なぜ銀行は「為替手数料無料」と書いておきながら、レートに上乗せするのですか?

仕組みとしては「手数料を取らずに、レートのマージンで稼ぐ」という建て付けにしているだけです。レートの不利さ(スプレッド)は明示手数料より見えにくく、結果として受け取る額が減ることに変わりありません。「無料」と「安い」は別物、ということを覚えておくと、チラシの表示に惑わされにくくなります。

同じ銀行でも、TTS・TTBのスプレッドは時間帯や金額で変わりますか?

はい。銀行が提示するTTS・TTBは、インターバンク市場の仲値・スプレッド・流動性に加え、自行の手数料ポリシーに応じて変わります。多くは外貨預金・両替とも同じTTS/TTBを使いますが、企業向け大口送金では別に優遇レートが適用されることもあります。比較するときは、自分の取引条件での適用レートを必ず確認してください。

外貨預金と円から外貨に換える両替は、どちらが得ですか?

同じ「外貨を買う」取引に見えますが、コスト構造が違う場合があります。外貨預金は通常、同じ銀行のTTSが使われ、為替スプレッド+金利で収益を得る商品設計になっています。一方、円→外貨の単純両替はスプレッドのみ。長期保有前提なら金利込みで考える必要がありますが、短期売買や単発の海外出張であれば、両替の方がシンプルで判断しやすいでしょう。

コンビニATMの120円は、1回ごとに引かれますか?

はい、手数料は引出し1回あたりにかかります。3,000円を引くときは4%、30,000円を引くときは0.4%と、1回の金額が大きいほど固定費の比率は薄れるため、少額の頻回引出しは避けるのが得策です。

データソースと更新

文中レートは市場仲値(ミッドマーケットレート)を基準とし、European Central Bank のリファレンスレート、Open Exchange Rates、Frankfurter、exchangerate.host など複数のデータソースを併用しています。表示は5分ごとに更新されます。TTS・TTB・スプレッドは各金融機関が個別に決めるため、ここでの数字は一般的なレンジであり、あなたの銀行・カードの実際の料率ではありません。必ず自分の契約条件を確認してください。

本文は2026年9月15日に公開しました。データの更新や記述の誤りにお気付きの方は、お問い合わせページからご連絡ください。確認のうえ、訂正版を反映します。

更新履歴。初回公開:2026年9月15日、TTS・TTBと仲値の関係、1万ドル相当の実例、4チャネルのスプレッド比較。次回の見直しは、各金融機関の公示レート改定に合わせて予定しています。

方法論に関する注記: 本記事は文書化された編集方針に沿って作成され、Fengvi 編集チームによる確認を経ています。引用されたデータはすべて「データソースと更新」セクションに記載された公開情報源に基づいています。

本文は一般的な情報提供のみを目的としており、金融・投資・税務上のアドバイスを構成するものではありません。実際のレート・手数料・税率は銀行・カード・時期で変わります。本文の結論は、あなたが自分で数字を出して検証できる範囲でのみ成立します。